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醒睡笑 巻7 舞
10 ある舞々の奥州に下向するありし道にて会下の寺に泊まる・・・
校訂本文
ある舞々の奥州に下向するありし道にて、会下(ゑげ)の寺に泊まる。非時(ひじ)過ぎて、大織冠(たいしょくくわん)を舞ふ。嫁入り詰めの半ばに、住持の長老落涙の気色(きしよく)あり。侍者ども思ふ、「何のあわれしきこともなきに、不思議なる愁傷かな」と。
舞過ぎて、件(くだん)の旨(むね)を尋ねければ、「愚僧は舞に涙のこぼれたるにあらず。あれほど下手では、はるばると下りたりとも、聞く者あるまい。『餓(かつ)ゑ死なうか』と思ひ、ふびんさに泣いたよ」と。
翻刻
一 ある舞々の奥州(おうしう)に下向(げかう)するありし道にて 会下(ゑげ)の寺にとまる非時(ひぢ)過て大織冠(たいしょくはん)をまふ よめ入詰(つめ)の半(なかば)に住寺の長老落涙(らくるい)の気色(きしよく) あり侍者どもおもふなにのあわれしき事 もなきにふしきなる愁傷(しうしやう)かなと舞過(すぎ)て 件(くだん)の旨をたつねけれは愚僧は舞に涙の/n7-55l]
こほれたるにあらずあれほど下手ではは るはると下りたりとも聞者あるまいかつ へしなうかとおもひふびんさにないたよと/n7-56r
text/sesuisho/n_sesuisho7-117.txt · 最終更新: 2022/09/16 11:27 by Satoshi Nakagawa