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醒睡笑 巻7 謡
25 田舎者どもの寄り合ひ小野の小町は美人にて・・・
校訂本文
田舎者1)どもの寄り合ひ、「小野の小町2)は美人にて、桃花(たうくわ)雨を帯びたる風情とも讃め、歌の道世にすぐれ、嫗(をうな)の姿になぞらへ、よわよわと詠みたるなど讃めけるが、勿怪(もつけ)なことは、気が短慮に、酒に酔(ゑ)うては人とからかひ、垣壁(かきかべ)をも打ち破り、﨟次(らつし)がなかつた、大疵(おほきず)」と言ふ。「上戸とも下戸とも短気とも知らざりし。そちには誰が語りて聞かせたるぞ」。「関寺小町3)を聞き給へ。『垣に喧嘩をかけ戸には酔狂を連ねつつ4)』と」。
翻刻
一 いな者とものよりあひ小野の小町は美人 にて桃花(とうくわ)雨を帯(おひ)たる風情ともほめ哥 の道世にすくれおふなのすがたになそらへよ はよはとよみたるなとほめけるが勿怪(もつけ)な 事は気が短慮に酒にゑふては人とからかひ 垣壁(かきかべ)をも打やぶりらつしがなかつた大疵(おおきず) といふ上戸とも下戸とも短気ともしらざり/n7-43l
しそちには誰が語(かたり)てきかせたるそ関寺 小町を聞給へ垣に喧嘩(けんくわ)をかけ戸には酔(すい) 狂(きやう)をつらねつつと/n7-44r
text/sesuisho/n_sesuisho7-083.txt · 最終更新: 2022/08/17 18:42 by Satoshi Nakagawa