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醒睡笑 巻7 似合うたのぞみ
10 都に候ふ乞食ども暑月の夕涼み木の下に頭を並べ・・・
校訂本文
都に候ふ乞食(こつじき)ども、暑月(しよげつ)の夕涼み、木の下に頭を並べ、「今来ん盂蘭盆(うらぼん)を、そちどもはいづくにて送らんや。ちと処(ところ)をかへ、堺の津に行き、仕舞ひをせんはいかに」と言ふに、「もつとも」と同じ、五・六人づれにて下り、ここにいたれば、その寺の乞食あり。かしこにおもむけば、その所にもらひつけたる乞食あり。施餓鬼(せがき)につけ、霊前の供(ぐ)につけ、一飯も京の乞食の所得なし。
すごすごと京に帰り上る。似たるを友の乞食、行き合ひ、「堺にての様子は何とか」と問ふ。「そのことよ。堺へ下つて、ざつと乞食になつた」と。
日ごろはわが身を何と思うたぞ。1)
翻刻
一 都に候乞食(こつじき)とも暑月(しよげつ)の夕すすみ木の下に 頭をならへ今こん盂蘭盆(うらぼん)をそちともは いつくにて送らんやちと処を替(かへ)堺の津(つ)に 行仕舞をせんはいかにといふに尤と同し五 六人つれにてくたり爰にいたれは其寺の 乞食ありかしこにおもむけは其ところに/n7-25r
もらひつけたる乞食あり施餓鬼(せがき)につけ霊(れい) 前(せん)の供(ぐ)につけ一飯(はん)も京の乞食の所得な しすごすごと京に帰りのほる似たるを友 の乞食行合(ゆきあひ)堺にてのやうすはなにとかと とふ其事よ堺へくだつてさつと乞食に なつたと 日比はわか身をなにと思ふたぞ/n7-25l
1)
底本、この文小書き。
text/sesuisho/n_sesuisho7-041.txt · 最終更新: 2022/07/20 14:39 by Satoshi Nakagawa