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text:sesuisho:n_sesuisho7-031

醒睡笑 巻7 いひ損ひはなほらぬ

12 屋渡りの祝とて人集まり並み居酒宴興を尽せば・・・

校訂本文

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屋渡りの祝とて、人集まり並み居、酒宴興を尽せば、時移り暮れに及ぶまま、客の中より、しかも調子高に、「亭主、もはや火を出せ、火を出せ1)」と言ふ。なま酔(ゑ)ひなる者聞きつけ、肝をつぶし、「いやいや、今のは自火でござるぞ」と。

嫌な言ひ訳かな。

  葉音そよそよ荻の上風(うはかぜ)

といふ句に、

  ませ垣の内には人の米かみて

と出だしたり。「て留り2)が指合ひた3)」とあれば、

  ませ垣の内には人のかみて米

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一 屋わたりの祝とて人あつまり並居(なみゐ)酒宴(しゆえん)
  興をつくせは時うつり暮にをよぶまま客
  の中よりしかも調子たかに亭主もはや
  火をだせ火をだせといふなまゑひなる/n7-18r
  者聞つけ肝をつぶしいやいや今のは自火(しくわ)
  て御ざるぞといやないひわけかな
   葉をとそよそよ荻の上風
  といふ句に
   ませ垣の内には人の米かみて
  と出したりてどまりか指合(さしあひ)たとあれば
   ませかきの内には人のかみて米/n7-18l
1)
明かりを出せの意。
2)
句末が「て」で終わること。
3)
禁制に触れた。
text/sesuisho/n_sesuisho7-031.txt · 最終更新: 2022/06/28 22:29 by Satoshi Nakagawa