text:sesuisho:n_sesuisho7-014
醒睡笑 巻7 思の色を外にいふ
14 老人ありわが年を隠していくつと問へどつひに言はず・・・
校訂本文
老人あり。わが年を隠して、「いくつ」と問へど、つひに言はず。ある時、「子の年の人は、誰と果報がある」と、いくたりも指を折りつつ、「そなたは何の年ぞ」と。仕合せよき人数になるが嬉しくや侍りけん、「われも子の年」と語るにぞ、すなはち繰りて見、その年をいくつと指す。かの人だまされ、やすからず思ひゐけり1)。
また他席(たせき)に、「何の年」と問ふ時、「狼の年」と答へたり。
翻刻
一 老人あり我かとしをかくしていくつととへ どつゐにいはずある時子の年人は誰と 果報(くわほう)があるといくたりもゆびをおりつつ そなたはなにのとしぞと仕合よき人数に なるがうれしくや侍(はんへ)りけんわれも子のとしと/n7-10r
かたるにそ即くりて見其年をいくつと さすかの人だまされやすからず思ひゐ ゑり又他席(たせき)になにの年ととふ時狼(をほかみ)の 年とこたへたり/n7-10l
1)
「けり」は底本「ゑり」。諸本により訂正。
text/sesuisho/n_sesuisho7-014.txt · 最終更新: 2022/06/18 12:08 by Satoshi Nakagawa