text:sesuisho:n_sesuisho6-126
醒睡笑 巻6 うそつき
6 明け暮れ嘘に過を言ひ回りたる者の方へ思ひよらず客あり・・・
校訂本文
明け暮れ、嘘に過(くわ)を言ひ回りたる者の方へ、思ひよらず客あり。常にあさましき小者二人使ふとて、一人の名をば「十人」と付け、一人の名をば「五人」と付け置きたりしが、客の聞くやうに声を高々と、「やいやい、十人は山へ薪(たきぎ)しに行け。五人は藪(やぶ)の竹を切れ」と。
言ふに似ぬ心の内のつたなさを恥づる思ひのなどなかるらむ
月も日もさやかに照らすかひぞなきこの世の人のうはの空ごと
空にけふ人は恥づべき時雨(しぐれ)かな
翻刻
一 明暮うそにくわをいひまはりたる者のかたへ 思ひよらす客ありつねに浅間しき小者 二人つかふとて一人の名をは十人とつけひと りの名をは五人とつけ置たりしか客の聞やう に声を高々とやいやい十人は山へ薪しにゆけ 五人は藪の竹をきれと/n6-62l
いふに似ぬこころの内のつたなさを はつるおもひのなとなかるらむ 月も日もさやかに照すかひそなき この世の人のうはの空こと 空にけふ人ははつへき時雨かな/n6-63r
text/sesuisho/n_sesuisho6-126.txt · 最終更新: 2022/06/06 00:13 by Satoshi Nakagawa