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醒睡笑 巻6 児の噂
44 大児と小児と二人ゐて菓子に出でたる串柿を賞翫あるに・・・
校訂本文
大児(おほちご)と小児(こちご)と二人ゐて、菓子に出でたる串柿(くしがき)を賞翫(しやうくわん)あるに、大児のは数少なく、小児のは多し。大児、「同じやうに食ふ柿の、そなたの は、何とてはかがゆく。われがは、いかなれば数が少なきぞや」。小児の返事に、「そなたのは、欲が切れぬゆゑに遅し。われは無欲なるまま、はかがゆく」とあり。大児、重ねて、「欲とは何ぞ」。小児教へて言へるやう、「柿には核(さね)といふ失せ物ありて、着逃げせんとする。それにかまひ、とかくする間、費(つひえ)あり。その欲をさへ着らせば、かならす物数を食ふ徳あり。
翻刻
一 大児と小児とふたりゐて菓子に出たるくし 柿を賞翫あるに大児のは数すくなく小 児のはおほし大児同し様にくふ柿のそなたの はなにとてはかがゆく我れかはいかなれは数がすく/n6-21l
なきぞや小児の返事にそなたのは欲かきれぬ ゆへに遅し我は無欲なる儘はかかゆくとあり 大児重て欲とはなんそ小児をしへていへるや う柿には核といふうせ物ありてきにけせん とするそれにかまいとかくする間費あり其欲を さへきらせはかならす物数をくふ徳あり/n6-22r
text/sesuisho/n_sesuisho6-044.txt · 最終更新: 2022/04/30 22:07 by Satoshi Nakagawa