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醒睡笑 巻5 婲心
11 伊勢より熊野へ参詣の武士あり・・・
校訂本文
伊勢より熊野へ参詣の武士あり。音無(おとなし)の天神といふあたりにて、一本の梅咲き、深き匂ひの漏れ来るを、供したる人夫とりあへず、
音無しに咲きぞ初めける梅の花匂はざりせばいかで知らまし
と言ひけるを、主人聞き付け、馬上より、その者のいにしへを問へば、
花ならはおりても人の問ふべきになり下がりたるみこそつらけれ
と詠みし。
いよいよ主人、感にたへ、やがて侍になし、身近う情をかけつるとなん。
翻刻
一 伊勢より熊野へ参詣の武士ありおとなし の天神といふあたりにて一本(き)の梅さきふかき にほひのもれくるを供したる人夫(ぶ)とりあ へず 音なしに咲そ初ける梅の花 匂はざりせはいかてしらまし といひけるを主人聞つけ馬上より其者(もの)のい/n5-8r
にしへをとへは 花ならはおりても人のとふべきに なりさがりたる身こそつらけれ とよみしいよいよ主人感(かん)にたえやかて侍 になし身ちかふ情(なさけ)をかけつるとなん/n5-8l
text/sesuisho/n_sesuisho5-011.txt · 最終更新: 2022/02/20 21:44 by Satoshi Nakagawa