text:sesuisho:n_sesuisho3-093
醒睡笑 巻3 自堕落
17 天に目なしと思ひぬた膾を食ひぬるところへ檀那来たり見付けたれば・・・
校訂本文
天に目なしと思ひ、ぬた膾(なます)を食ひぬるところへ、檀那来たり見付けたれば、ちと物読みたる僧にやありけん、「よきみぎりの入堂なるかな。ここに歴劫不思議(りやくごふふしぎ)の法味あり。まづ天地の間に七十二候とて、時の移るに応じ物のかはり行く奇特(きどく)を申さん。田鼠(でんそ)化して鶉(うづら)となり、雀(すずめ)海中に入りて蛤(はまぐり)となり、鳩反じて鷹となるといふことあるが1)、愚僧が菜(さい)にすわりたるあへ物、反じてぬた膾と眼前になりたる、この奇特を御覧ぜよ」と。
翻刻
一 天に目なしとおもひぬたなますを食ぬる/n3-43r
処へたんな来り見つけたれはちと物よみたる 僧にやありけんよき砌の入堂なるかな ここに歴劫(りやくこう)不思議の法味ありまつ天地の あひだに七十二候とて時のうつるに応(おふ)し 物のかはり行奇特を申さん田鼠化して 鶉(うづら)となり雀(すすめ)海中(かいちう)に入て蛤となり鳩(はと) 反(へん)して鷹となるといふ事あるが愚(ぐ) 僧か菜(さい)にすはりたるあへもの反してぬた なますと眼前(かんせん)になりたる此奇特を御/n3-43l
覧せよと/n3-44r
1)
『礼記』月令篇。
text/sesuisho/n_sesuisho3-093.txt · 最終更新: 2021/11/03 16:44 by Satoshi Nakagawa