text:sesuisho:n_sesuisho3-023
醒睡笑 巻3 不文字
4 同じやうなる者三人ともなひて貴人のもとに行きまづ上座の者・・・
校訂本文
同じやうなる者、三人ともなひて貴人のもとに行き、まづ上座の者、「とくまかり出で候はんを、われらの子持が乳に癰(よう)でき、治りては平癒(へいゆう)し、平癒しては治り、正月よりこの三月まで、それに取りまぎれ、参り遅れたる」と言ひければ、次に座したるが膝を突き、「ここな人は、お前てさやうの片言(かたこと)を申すものか。治るとは平癒、平癒とは治ることなり。一つ言葉を繰り返し、何事ぞや。さやうの丈尺(ぢやうしやく)、重ねてつかはしますな」と言ふを、その次の者聞きて、「さても、お身の丈尺言葉は何ぞ。大工やなどの上にこそ言ふ言葉ならんめ。御身たちが片言を言ふを聞いて、おれが顔は、そのまま赤飯1)したる」と。
翻刻
一 同し様なる者三人ともなひて貴人のもとに 行まつ上座の者とく罷出候はんを我らの子持/n3-12l
か乳に癰(よう)出来なをりては平癒し平癒し てはなをり正月より此三月までそれにとり まきれ参りをくれたるといひければ次に座し たるか膝(ひざ)をつき爰な人はお前(まへ)てさやうのかた ことを申物かなをるとはへいゆうへいゆうとは なをる事也一つことばをくり返し何事そや さやうの丈尺(ていしやく)かさねてつかはしますなといふを 其次のもの聞てさてもお身の丈尺ことばは なんぞ大工やなどのうへにこそいふことばならんめ/n3-13r
御身たちかかたことをいふをきいておれかかほは そのまませきはんしたると/n3-13l
1)
赤面を間違えた。
text/sesuisho/n_sesuisho3-023.txt · 最終更新: 2021/09/20 23:53 by Satoshi Nakagawa