text:sesuisho:n_sesuisho2-010
醒睡笑 巻2 名付け親方
10 佐渡に本覚坊といふ山伏あり治部卿とて弟子を持ちしが・・・
校訂本文
佐渡に本覚坊といふ山伏あり。治部卿とて弟子を持ちしが、ある年、名代(みやうだい)と号し峯入りさせけり。雲に臥し岩を枕の難行、事終り本国に帰りぬ。
師の本覚対面の時、治部卿申しけるやう、「このたびは先達憐愍(せんだちれんみん)を加へられ、名を替へ大夫(だいぶ)になされて候ふ」と語りければ、「何と大夫となつた。曲事(くせごと)なり。われさへさやうに大きなる名をば付かぬに、なかなかのことや。さりながら、本山にて付きたる名を呼ばぬも、またいかかなる条(でう)、ただ中夫(ちゅうぶ)になれ」とぞ直しける。
翻刻
一 佐渡に本覚坊といふ山伏あり治部卿とて弟子 をもちしかある年名代と号し嶺 入させけり雲に臥岩を枕の難行事 をはり本国に帰りぬ師の本覚対面の時 治部卿申けるやう今度は先達憐愍をくはへ られ名を替大夫になされて候とかたり けれはなにと大夫となつた曲事なりはれ/n2-8r
さへさやうに大なる名をはつかぬに中々のこと やさりなから本山にてつきたる名をよはぬも 又いかかなる条たた中夫になれとそ なをしける/n2-8l
text/sesuisho/n_sesuisho2-010.txt · 最終更新: 2021/06/22 22:13 by Satoshi Nakagawa