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醒睡笑 巻2 名付け親方
1 いろはをも知らぬこざかしき俗あり・・・
校訂本文
いろはをも知らぬこざかしき俗(ぞく)あり。ある東堂の座下に参り、「われわれ年も半ばふけ、若名(わかな)にてもいかがに候ふ。なにとぞ、左衛門か右衛門と名を付きたき」よし望みしかば、東堂、「おほかたそちの付きたいと思ひ寄りたるを言うて聞かせよ」とあれば、「さらば『日本左衛門』とつきたき」よし、申しけり。
東堂、あざ笑つて、「さやうの大きなる名は珍し過ぎて、愚僧まで人の褒貶せんずるは」とあれば 、件(くだん)の男、「いや、あまり大きなる名とは存じ候はず。とう左衛門1)と付きたるさへござ候ふは」。
翻刻
醒睡笑巻之二 名津希親方 一 いろはをもしらぬこさかしき俗ありある東堂 の座下にまいりわれわれ年もなかばふけ わか名にてもいかかに候なにとそ左衛門か右衛門 となをつきたきよし望しかは東堂大かた そちのつきたいとおもひよりたるをいふて きかせよとあれはさらは日本左衛門とつき たきよし申けり東堂あさわらつてさやうの/n2-3l
大なる名はめつらし過て愚僧まて人の ほうへんせんするはとあれはくたんの男いや あまり大なる名とは存候はすとう左衛門とつき たるさへ御座候は/n2-4r
1)
藤左衛門・唐左衛門
text/sesuisho/n_sesuisho2-001.txt · 最終更新: 2021/06/17 17:25 by Satoshi Nakagawa