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text:sesuisho:n_sesuisho1-109

醒睡笑 巻1 鈍副子

12 鈍なる男兵庫の町を通りけるに黒犬の大きなるが出でて・・・

校訂本文

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鈍なる男、兵庫の町を通りけるに、黒犬の大きなるが出でて、したたかにすねを食らひけり。「あらかなしや」といふ声聞きつけ、犬の主、追ひ散らしぬ。

この男、せんかたなく無心なることに思ひつづけ、尼崎まで来たりしが、黒きゑのこのあるを見付け、ひたもの蹴つ踏みけるを、主人出で合ひ、「これは曲者なり。何の咎(とが)にさやうにはするぞ。打て、叩け」と人集まりたれば、「まつぴら御免候へ。兵庫で足を黒犬に食らはれたる無念の腹をゐんとて蹴た」とこそ。

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一 鈍なる男兵庫の町をとをりけるに黒
  犬の大なるが出てしたたかにすねをくらひけ
  りあらかなしやといふ声聞つけ犬の主をひちら
  しぬ此男せんかたなく無心なる事におもひつつ
  け尼か崎まできたりしかくろきゑのこの
  あるを見つけひた物けつふみけるを主人
  出合これはくせもの也なにのとかにさやうには/n1-52r
  するぞうてたたけと人あつまりたれはまつび
  ら御免候へ兵庫で足をくろ犬にくらはれ
  たる無念の腹をゐんとてけたとこそ/n1-52l
text/sesuisho/n_sesuisho1-109.txt · 最終更新: 2021/05/17 23:03 by Satoshi Nakagawa