text:sesuisho:n_sesuisho1-101
醒睡笑 巻1 鈍副子
4 ある寺の院主に知音の人ありて門前まで訪れられけるを・・・
校訂本文
ある寺の院主(ゐんじゆ)に知音(ちいん)の人ありて、門前まで訪れられけるを、弟子出でて見付け、そのまま方丈に行き、「ものの御出(おい)でにて候ふ」と言ふ。
院主、大きに腹を立て、「『もの』とは誰かことぞ。さてもうつけを尽す奴(やつ)かな。いざわれ出でて見ん」とて、窓よりそとのぞき、つくづく見るに、顔ばかり覚え、つひに名をばうち忘れ、弟子に向ひ、「まことにものぢやよ」と言へり。
翻刻
一 有寺の院主(ゐんしゆ)に知音の人ありて門前まて をとつれられけるを弟子出て見つけその まま方丈にゆきものの御出にて候といふ 院主大に腹をたてものとはたれか事そさ てもうつけをつくすやつかないさわれ出て みんとて窓よりそとのそきつくつく見るに顔(かほ)/n1-47l
はかりおほえつゐに名をはうち忘れ弟子に むかひまことにものちやよといへり/n1-48r
text/sesuisho/n_sesuisho1-101.txt · 最終更新: 2021/05/13 23:00 by Satoshi Nakagawa