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醒睡笑 巻1 謂へば謂はるる物の由来
25 世間に下手なる者を饂飩食らひといふことは・・・
校訂本文
世間に下手なる者を「饂飩(うどん)食らひ」といふことは、けしからず饂飩を好く者あり。さすが買うては食ひともなし。利口になき坊主に向ひ、「そなた、わが髪(かみ)を剃りてたび候へ。もし切られ候はば、饂飩を振る舞はれよ。難なく剃られたらば、われ振る舞はん」と言ひ合はせ、剃らるるに、はや切らずに剃り果てんとするつがひに、ふと立ち、少し切られんとしければ、耳を一つ落されたり。
腹をば立たで、結句(けつく)喜びぬるは、珍しきうつけなるかな。
翻刻
一 世間に下手なる者を饂飩(うとん)くらひと云事は けしからすうとんをすく者ありさすがかう てはくいともなし利口になき坊主にむかひ そなたわが髪(かみ)をそりてたび候へもしきられ候はは 饂飩(うとん)をふるまはれよ難なくそられたらば我ふ るまはんといひあはせそらるるにはやきらずに そりはてんとするつがいにふとたち少きられん としけれは耳を一つおとされたり腹をはたたて 結句(けつく)よろこひぬるはめつらしきうつけなるかな/n1-14r
text/sesuisho/n_sesuisho1-025.txt · 最終更新: 2021/04/07 15:20 by Satoshi Nakagawa