text:sanboe:ka_sanboe3-oku
下巻 賛・奥書
書き下し文
賛に云はく、「人の善根を喜ぶに、我が功徳となる。若しは自(みづか)ら行ひ至りて相ひ扶(たす)け、若しは遥かに見、問ひて随喜(ずいき)するに、能く喜ぶ。人の心も同じければ、行ふ人の報いと等し。人の焼香に中(あた)る、その匂ひ同じく移り、人の燃火に対(むか)ふに、その光同じく照らすがごとし」と宣(のたま)へり。
我が宮1)、深窓に養はれて未だ外(ほか)の事を知らず。他家の遠き事を心中に思ひ遣りて、我が国の近き事をば眼の前に知見し、公私の仏事、和漢の法会、種々(くさぐさ)これを写して、各々(おのおの)これを書く。戸を出でずして天下の貴き事を知るにこの巻にしかず。彼の弥勒の五悔(ごくゑ)を行へる、その中に随喜方便(ずいきはうべん)の詞(ことば)を演説し、普賢十願を立つ。その内に随喜功徳の誓ひを憑(たの)むべし。僧の勤むる諸事、貴きかな、尊きかな。
翻刻
賛云喜フニ人善根為ナル我カ功徳若自行至テ相扶ケ若ハ遥 見問テ随喜スルニ能喜フ人ノ心モ同ケレハ等ヒトシ行フ人ノ報ト如ト宣ヘリ中アタル人ノ焼 香ニ其匂同移ヌ対フニ人ノ燃火其光同照スカ我宮養レテ/n3-79l・e3-77l
https://dl.ndl.go.jp/pid/1140087/1/79
深窓未知外事他家ノ遠キ事ヲ心中ニ思遣テ我国ノ近事ヲハ 眼ノ前ニ知見シ公私ノ仏事和漢法会種々写テ之各々 書之不出戸知天下貴事不如是巻彼弥勒ノ 行ヘル五悔其中ニ演説随喜方便ノ詞普賢立十願 其内可憑随喜功徳誓僧勤諸事貴哉尊 矣 三宝絵下/n3-80r・e3-78r
文永十年八月八日(彼岸/中日)未刻 書写了 戸部二千石三善朝臣【花押】 東寺宝泉院本/n3-80l・e3-78l
1)
尊子内親王
text/sanboe/ka_sanboe3-oku.txt · 最終更新: 2025/02/07 16:19 by Satoshi Nakagawa