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text:ichigonhodan:ndl_ichigon115

一言芳談抄 巻之下

115 信空上人問うて云はく智恵もし往生の要たるべくは・・・

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信空(しんくう)上人、問うて云はく、「智恵、もし往生の要たるべくは、正直に仰せを蒙りて、修学(しゆがく)を営むべし。また、ただ称名不足なくは、その旨(むね)を存ずべく候ふ」云々。

答へて云はく1)、「往生の業(ごふ)は、これ称名といふこと。釈(しやく)の文(もん)2)、分明(ぶんみやう)なり。有智(うち)・無智(むち)を簡(えら)まずといふこと、また以て顕然(けんぜん)なり。しかれば、往生のため称名(しようみやう)足れりとす。学問を好むとせむよりは、一向に念仏すべし。弥陀・観音・勢至に逢ひ奉るの時、いづれの法文か達せざらん。念仏往生の旨(むね)を知らざらんほどは、これを学ぶべし。もし、これを知り終りなば、いくばくならざる智恵を求めて、称名の暇(いとま)を妨ぐべからず」。

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信空(しんくう)上人問云(とふていはく)。智恵(ちえ)もし往生の要(よう)たるべくは。正(しやう)
直(じき)に仰(おほせ)をかふむりて。修学(しゆがく)をいとなむべし。又ただ
称名(せうみやう)不足(そく)なくは。そのむねを。存(ぞんず)べく候云々答云(こたへていはく)。往
生の業(ごう)は。是(これ)称名(せうみやう)といふ事。尺(しやく)の文(もん)分明(ふんみやう)也。有智(うち)
無智(むち)を不簡(えらます)といふこと。又以顕然(けんぜん)なり。然(しかれ)ば。為往生(わうじやうのため)
称名(せうみやう)為足(たれりとす)学問(がくもん)を好(このむ)とせむよりは。一向(いつかう)に。念仏すべ
し。弥陀(みだ)観音(くはんおん)勢至(せいし)に。奉逢(あひたてまつる)の時(とき)。何(いづれ)の法文(ほうもん)か達(たつ)せさ
らん。念仏往生の旨(むね)をしらざらんほどは可学之(これをまなぶべし)/ndl2-17r
。もしこれを知(しり)をはりなは。いくばくならざる。智恵(ちゑ)を
もとめて。称名(せうみやう)の暇(いとま)をさまたぐべからす/ndl2-17l

https://dl.ndl.go.jp/ja/pid/2583391/1/17

1)
法然の言葉。
2)
善導の注釈
text/ichigonhodan/ndl_ichigon115.txt · 最終更新: 2023/11/11 22:53 by Satoshi Nakagawa