text:ichigonhodan:ndl_ichigon089
一言芳談抄 巻之下
89 敬仏房の云はく婬事対治不浄無常はなほ次なり・・・
校訂本文
敬仏房の云はく、「婬事対治(いんじたいぢ)、不浄無常(ふじやうむじやう)はなほ次(つぎ)なり。ただ貧をもつて最(もつとも)とす。これによつて、故上人1)は、『あながちに憂へず。貧賤をさきとするゆゑなり。今の後世者(ごせじや)は、その身富有(ふいう)なるがゆゑに、このこと禁(いまし)めがたし』と云々。
同じく上人、あからさまにても、男女(なんによ)の間の事、物語にし給はず。
同じく上人、ある同朋(どうぼう)に、後世者の究竟(くきやう)のこと教へんとて云はく、『身は賤しくて、心は高くありなん』。
同じく上人云はく、『今度、法印御房(ほふいんごばう)2)を見奉るに、日ごろの所存を変へたるなり。させることもなかりけることを、やうがましく思ひけるなり。まことに、ほれぼれと念仏するにはしかず』と云々」。
翻刻
敬仏房云(きやうふつばうのいはく)婬事対治(いんじたいぢ)不浄無常(ふじやうむじやう)は猶(なを)次(つぎ)也只以(ただひんを) 貧(もつて)為最(もつともす)依之(これによつて)。故上人はあながちにうれへず。貧賤(ひんせん) をさきとする故(ゆへ)也。今(いま)の後世者(ごせじや)は。其身(そのみ)冨有(ふゆう)なる がゆへに。此事(このこと)難禁(いましめがたしと)云々。同(おなじく)上人あからさまにても 。男女(なんによ)の間事(あひだのこと)物語(ものかたり)にし給はず。同上人(おなじくしやうにん)或同朋(あるどうほう)に 。後世者(ごせじや)の究竟(くきやう)の事(こと)をしへんとて云。身はいやし くて。心(こころ)はたかくありなん。同上人云。今度(こんど)法印御房(ほういんごばう) を見たてまつるに。日来(ひごろ)の所存(しよぞん)をかへたる也。させる 事もなかりける事を。様(やう)がましく思ひける也。誠(まこと)に/ndl2-11l
https://dl.ndl.go.jp/ja/pid/2583391/1/11
ほれほれと念仏(ねんぶつ)するには。不如(しかずと)云々/ndl2-12r
text/ichigonhodan/ndl_ichigon089.txt · 最終更新: 2023/10/08 15:11 by Satoshi Nakagawa