text:ichigonhodan:ndl_ichigon075
一言芳談抄 巻之下
75 或人敬日房に問うて云はく称名は往生の要と知りて・・・
校訂本文
或人(あるひと)、敬日房(きやうじつばう)に問うて云はく、「称名(しようみやう)は往生の要(かなめ)と知りて、唱へ候へども、心には野山(やさん)のことのみ思はれて、口ばかりに唱ふれば、いかが候ふべき」。
答へて云はく、「御房(ごばう)は、これへおはしまさんといふ心にて、立ち出で歩ませ給ふ間は、歩む足ごとに、『これへ、これへ』とばかり思ひ給ふこと、よもあらじ。あらぬことをも思ひてこそ、歩み給ひつらめ。されども、歩むこと止まずして、これまでおはしたり。この定(ぢやう)に、『極楽に往生せむ』といふ願(ぐわん)をおこして後、弥陀の名号(みやうがう)を唱へ給ふ間には、あらぬことを思し召すとも、称名止まずして、命終はるまで行なひ給はば、往生決定(わうじやうけつじやう)なるべし」。
翻刻
或人(あるひと)敬日房(きやうじつばう)に問(とふて)云(いはく)。称名(せうみやう)は往生(わうじやう)の要(かなめ)としりて。と なへ候へども。心には野山(やさん)のことのみ思はれて。口(くち)ばか りに唱(となふ)れば。いかが候べき。答云(こたへていはく)御房(ごばう)はこれへおはし まさんと。いふ心(こころ)にて。立出(たちいて)あゆませ給ふあいたは。あ ゆむあしごとに。これへこれへとばかりおもひ給ふ事/ndl2-7l
https://dl.ndl.go.jp/ja/pid/2583391/1/7/
よもあらじ。あらぬことをも思ひてこそ。あゆみ給 つらめ。されどもあゆむことやまずして。これまで おはしたり。此定(このさだめ)に極楽(ごくらく)に往生(わうじやう)せむといふ 。願(くはん)ををこし亭(て)後(のち)。弥陀(みだ)の名号(みやうがう)をとなへ給ふ間 には。あらぬことを。おぼしめすとも。称名(せうみやう)やま ずして。命終(いのちおはる)まで行(おこなひ)給はば。往生決定(わうぢやうけつちやう)なるべし/ndl2-8r
text/ichigonhodan/ndl_ichigon075.txt · 最終更新: 2023/09/19 15:13 by Satoshi Nakagawa