text:ichigonhodan:ndl_ichigon057
一言芳談抄 巻之下
57 又云はく心苦しき悕望どもを投げ捨てて・・・
校訂本文
又云はく1)、「心苦しき悕望(けまう)どもを投げ捨てて、ただありのままなる心にて、平(へい)に2)名号(みやうがう)を唱へんと思ひつる3)ごときは、はて、少なし。黒白(こくびやく)を弁(わきま)へざるほどのものになりて、平(へい)に念仏せむと思へる意楽(いげう)を、真実におこせる人もなきなり。
阿弥陀仏の本願、他力の不思議の身をば、いかほどの力と知りたるやらん。人ごとに分斉(ぶんざい)を作りて、罪悪の身をかへりみて、仏力(ぶつりき)・法力(ほうりき)に思ひつかざるなり。しかるあいだ、罪業もいよいよとどまらざるなり。これは、かへすがへすも悪しき心なり」。
翻刻
又云(いはく)。心くるしき悕望(けまう)どもを。なげすてて。ただありの ままなる心にて。互(たがひ)に名号(みやうがう)をとなへんと思ふつること きは。はてすくなし。黒白(こくびやく)を弁(わきまへ)ざるほどの物(もの)になりて 平(へい)に念仏(ねんぶつ)せむと。思へる意楽(いらく)を真実(しんじつ)に。おこせる 人もなき也。阿弥陀仏(あみだぶつ)の本願(ほんぐはん)他力(たりき)の。不思議(ふしぎ)の身 をば。いか程のちからとしりたるやらん。人ごとに分斉(ふんさい)/ndl2-3l
https://dl.ndl.go.jp/ja/pid/2583391/1/3
を作(つくり)て。罪悪(さいあく)の身(み)をかへりみて。仏力(ふつりき)法力(ほうりき)におもひ つかさるなり。然間(しかるあいだ)罪業(ざいごう)も。いよいよとどまらざる也 。これは返(かへす)々もあしき心なり。又死(し)をいそぐ心ばへは/ndl2-4r
text/ichigonhodan/ndl_ichigon057.txt · 最終更新: 2023/09/01 22:27 by Satoshi Nakagawa