rhizome:徒然草
徒然草
つれづれぐさ
成立
鎌倉時代後期の随筆。作者は兼好法師。平安時代の枕草子、鎌倉時代初期の方丈記とならんで、日本三大随筆といわれる。
内部徴証から元徳二年(1330)ごろの成立と考えられるが(橘純一氏)、近年は段階的に執筆されたという説も有力。
内容
題名は序段の「つれづれなるままに日くらし・・・」に由来する。
章段は古く『徒然草寿命院抄』からわけられており、序段と243段の本文からなる。
各章段は、分類されておらず、まさに「そこはかとなく」書いた観があるが、章段の間に関連性も見られ、連想の糸が存在するという指摘もある。
それぞれの章段の内容は、説話、教訓、有職故実、和歌、仏教、老荘思想とバラエティに富んでおり、歌人、能書家、遁世者、故実家といった、多く顔をもつ兼好の姿を如実に反映している。
また、独特の無常観や現実的合理主義は徒然草の特徴であるといえるだろう。
諸本
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- 慶長十八年古活字本など。本文が比較的整備され、江戸時代以降、ほとんどの底本となったが校訂を加えた形跡がある。
- 烏丸光広本の影印に「日本古典全集」(昭和元年・12月)がある。
- 第二類(正徹本系統)
- 『徒然草』現存最古の写本である正徹自筆本(静嘉堂文庫蔵)が現存。章段配列、本文の異同があり、兼好自筆本の姿を示すと考えられるものが多いが、所々脱落した本文がある。
- 影印本 笠間影印叢刊31
- 第三類(常縁本系統)
- 室町時代中期書写の、伝常縁本が現存する。流布本と比較して、本文、章段配列ともに大きな異同がある。
- 影印・翻刻 古典文庫149,190
- 第四類(幽斎本系統)
- 二十余本の伝本が確認されている。章段配列は流布本と変らないが、本文に異同が多い。
古注釈
江戸時代以降、多くの読者を獲得した徒然草は、たくさんの注釈書が作られた。
中でも、野槌・文段抄・大成は古注の代表として親しまれた。
書名 | 巻数 | 作者 | 刊行年 | 備考 |
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徒然草抄(寿命院抄) | 2巻 | 秦宗巴 | 慶長6年(跋) | 中院通勝の跋、古典文庫490に下巻のみ影印・翻刻 |
野槌 | 14巻 | 林羅山 | 寛永初年か(1626) | 国文注釈全書に収録 |
鉄槌 | 4巻 | 青木宗胡 | 慶安元年(1648) | 野槌を踏襲 |
慰草 | 絵入り8巻 | 松永貞徳(跋) | 慶安5年(1652)跋 | 貞徳の著か疑問? |
徒然草古今大意 | 2巻4冊 | 万治元年(1658)刊 | 寿命院抄・野槌・慰草を併記したもの。 | |
徒然草古今抄 | 8巻 | 大和田気求 | 万治元年(1658)刊 | 諸注の抄録と若干の自説。 |
金槌 | 12巻小型本 | 西道智 | 万治元年(1658)刊 | |
盤斎抄 | 13巻 | 加藤盤斎 | 寛文元年(1661)刊 | |
徒然草句解 | 7巻 | 高階楊順 | 寛文5年(1665)刊 | |
徒然草新註 | 4巻 | 清水春流 | 寛文7年(1667)刊 | |
徒然草文段抄 | 7巻 | 北村季吟 | 寛文7年(1667)刊 | 明治24年・27年・大正15年に活字本。 |
徒然草諺解 | 5巻 | 南部宗寿 | 寛文9年(1669)刊 | |
徒然草大全 | 13巻 | 高田宗賢 | 延宝5年(1677)刊 | 寿命院抄・野鎚などの大成と自説 |
徒然草参考 | 8巻 | 恵空 | 延宝6年(1678)刊 | |
徒然草直解 | 10巻5冊 | 岡西惟中 | 貞享3年(1686)刊 | |
徒然草諸抄大成 | 20巻 | 浅香山井 | 貞享5年(1688)刊 | 14種の旧注を網羅。活字本に国文注釈全書と吉沢義則編がある。 |
徒然草拾遺抄 | 4巻2冊 | 黒川由純 | 貞享3年? | 未刊国文古註釈大系(第十六冊)所収。 |
徒然草集説 | 15巻6冊 | 隠者閑寿 | 元禄14年刊(1701) | |
つれづれの讃 | 9巻 | 各務支考 | 宝永8年(1711) | 蕉門十哲の一人 |
徒然要草 | 7巻 | 厭求 | 天明3年(1783) |
参考
注釈書
- 徒然草諸注集成(田辺爵・右文書院・昭和37年5月)
- 徒然草全注釈上・下(安良岡康作・角川書店・昭和42年2月、昭和43年5月)
- 日本古典全書『徒然草』(橘純一・朝日新聞社・1947年1月)
- 角川文庫『徒然草』(今泉忠義・角川書店・1951年11月)
- 日本古典文学大系『方丈記・徒然草』(西尾実・岩波書店・1957年6月)
- 旺文社文庫『徒然草』(安良岡康作・旺文社・1974年8月)
- 講談社学術文庫『徒然草』1〜4(三木紀人・講談社・1979年9月〜1982年6月)
- 新潮日本古典集成『徒然草』(木藤才蔵・新潮社・1977年3月)
- 新日本古典文学大系『方丈記・徒然草』(佐竹昭広 久保田淳・岩波書店・1989年1月)
抄出・鑑賞
- 文芸読本Ⅱ『徒然草』(池田勉著 成城国文学会編・市ヶ谷出版会・昭和24年5月)
- 日本古典鑑賞講座13『方丈記・徒然草』(冨倉徳次郎・角川書店・昭和35年6月)
- 味わい方叢書『徒然草の味わい方』(佐々木八郎・明治書院・昭和48年9月)
- 新潮日本古典文学アルバム(稲田利徳・新潮社・1990年7月)
- 岩波セミナーブックス105『徒然草』(久保田淳・岩波書店・1992年10月)
研究書など
- 『諸説一覧徒然草』(市古貞次編・明治書院・昭和45年2月25日)
- 武石彰夫『徒然草の仏教圏』(桜楓社・昭和46年9月15日)
- 細谷直樹『方丈記・徒然草論』(笠間書院・1994/10/20)
- 小松英雄『徒然草抜書―表現解析の方法』(講談社学術文庫・1990/11/10)
- 五味文彦『徒然草の歴史学』(朝日新聞社・1997/5/25)
電子テキスト
rhizome/徒然草.txt · 最終更新: 2014/03/18 13:11 by Satoshi Nakagawa