ユーザ用ツール

サイト用ツール


text:towazu:towazu2-04

とはずがたり

巻2 4 さるほどに隆顕申すやう・・・

校訂本文

<<PREV 『とはずがたり』TOP NEXT>>

さるほどに、隆顕1)申すやう、「祖父(おほぢ)・叔父(おぢ)などとて、咎(とが)を行なはれ候ふ、みな外戚(げしやく)に侍る。伝へ聞く、いまだ内戚の祖母(むば)侍るなり。叔母、また同じく侍る。これに、いかが仰せなからん」と申さる。「さることなれども、筋2)の人などにてもなし。それらまで仰せられ候はんこと、あまりに候ふ。うるはしく、苦りぬべきことなり」と仰せあるに、「さるべきやう候はず。主(ぬし)3)を御使にてこそ仰せ候はめ。また、北山の准后こそ、幼くより御芳心にて、典侍大も侍りしか」と申す折に、「准后よりも罪かかりぬべくや」と西園寺4)に仰せらる。「あまりにかすかなる仰せにも候ふかな」と、しきりに申されしを、「いはれなし」とて、また責め落されて、それも勤められき。

御こと、常のごとく、沈(ぢん)の船に麝香(じやかう)の臍(へそ)三つにて、船差(ふなざ)し作りて乗せてと、御衣と、御前へ参る。二条左大臣5)に牛・太刀、残りの公卿には、牛、女房たちの中へは箔(はく)・洲流し・名したへ・紅梅なとの檀紙(だんし)百。

<<PREV 『とはずがたり』TOP NEXT>>

翻刻

くらるさるほとにたかあき申すやうおほちおちなととて
とかをおこなはれ候みな外しやくに侍るつたへきくいまた内
しやくのむは侍るなりおは又をなしく侍るこれにいかかおほ
せなからんと申さるさる事なれともすしの人なとにても
なしそれらまておほせられ候はん事あまりに候うるはしく/s70r k2-10
にかりぬへき事なりとおほせあるにさるへきやう候はすぬし
を御つかひにてこそおほせ候はめ又北山のしゆこうこそお
さなくより御はうしんにてすけ大も侍しかと申をりにしゆ
こうよりもつみかかりぬへくやと西園寺におほせらるあまりに
かすかなる仰にも候かなとしきりに申されしをいはれなし
とて又せめおとされてそれもつとめられき御ことつねの
ことくちんのふねにしやかうのへそ三にてふなさしつ
くりてのせてと御衣と御前へまいる二条左大臣にうし
たちのこりの公卿にはうし女房たちの中へははくすなかし
名したへこうはいなとのたんし百さてもさてあるへき/s70l k2-11

http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100218515/viewer/70

<<PREV 『とはずがたり』TOP NEXT>>

1)
四条隆顕
2)
「筋」(角川・集成)、「出仕」(新大系)。
3)
作者
4)
西園寺実兼
5)
二条師忠
text/towazu/towazu2-04.txt · 最終更新: 2019/07/15 10:32 by Satoshi Nakagawa