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text:towazu:towazu1-05

とはずがたり

巻1 5 昼つかた思ひよらぬ人の文あり・・・

校訂本文

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昼つかた、思ひよらぬ人1)の文あり。見れば、

  「今よりや思ひ消えなん一方に煙の末のなびき果てなば

これまでこそ2)つれなき命も長らへて侍りつれ。今は何事をか」などあり。「かかる心の跡のなきまで3)」と、だみ付けにしたる縹(はなだ)4)の薄様に書きたり。

「忍の山の」とある所を、いささか破りて、

  知られじな思ひ乱れれて夕煙なびきもやらぬ下の心は

とばかり書きてつかはししも、「とは何事ぞ」と、われながら思え侍りき。

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翻刻

ふみをもいまたみ侍らてなとや申されけんひるつかた思ひ
よらぬ人のふみありみれは
 今よりや思きえなん一かたに煙のすゑのなひきはて
なはこれに(ま歟)てこそつれなきいのちもなからへて侍つれいまは
なに事をかなとありかかる心のあとのなきまてとたみ
つけにしたるはなとのうすやうにかきたり忍の山のとある
所をいささかやりて
 しられしな思みたれて夕煙なひきもやらぬ下のこころは/s10l k1-11

http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100218515/viewer/10

とはかりかきてつかはししもとはなにことそと我なから覚
侍きかくて日くらし侍てゆなとをたにみ入侍らさりし/s11r k1-12

http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100218515/viewer/11

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1)
雪の曙・西園寺実兼
2)
「これまでこそ」は底本、「これにてこそ」で、「に」に「ま歟」と傍書。傍書に従う。
3)
『新古今和歌集』恋二 藤原雅経「消えねただ忍ぶの山の峰の雲かかる心のあとのなきまで」
4)
「縹」は底本「はなと」。
text/towazu/towazu1-05.txt · 最終更新: 2019/03/18 21:15 by Satoshi Nakagawa