ユーザ用ツール

サイト用ツール


text:takafusa:s_takafusa002

隆房集

2 昨日まで恨みし袖に今朝よりは逢ふ嬉しさを包みつるかな

校訂本文

<<PREV 『隆房集』TOP NEXT>>

勝間田(かつまた)の言ひも出ださぬ池にてだにも、濡れにし袖は乾く間なくて、あまたの春秋(はるあき)はゆきかへりにしぞかし。さざ波や近江(あふみ)の海1)のみるめなぎさにたどりては、また月日の数々積もれども、いや年のはにおき所なき、心のうちをせき止めがたくて、忍びも果てずなりにしぞかし。袖に涙のかかりける、契りのほどを知らずして、ありしその夜のあけぼのに、思ひしことのはかなさをなん、

  昨日まで恨みし袖に今朝よりは逢ふ嬉しさを包みつるかな

<<PREV 『隆房集』TOP NEXT>>

翻刻

 かつまたのいひもいたさぬいけ
 にてたにもぬれにしそては
 かはくまなくてあまたのはる
 秋はゆきかへりにしそかし
 ささなみやあふみのうみの
 みるめなきさにたとりては
 またつきひのかすかすつもれ
 ともいやとしのはにをき所なき/s7l

https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/100002834/7?ln=ja

 こころのうちをせきとめかたく
 てしのひもはてすなりに
 しそかしそてになみた
 のかかりけるちきりのほと
 をしらすしてありしその
 よのあけほのにおもひし
 ことのはかなさをなん
きのふまてうらみしそてにけさよりは
あふうれしさをつつみつるかな/s8r

https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/100002834/8?ln=ja

1)
琵琶湖
text/takafusa/s_takafusa002.txt · 最終更新: 2024/02/28 22:22 by Satoshi Nakagawa