text:jikkinsho:s_jikkinsho10-67
十訓抄 第十 才芸を庶幾すべき事
10の67 秦の穆公の女弄玉はたぐひなく簫を愛し周の霊王の太子王喬は・・・
校訂本文
秦の穆公の女(むすめ)、弄玉は、たぐひなく簫(せう)を愛し、周の霊王の太子、王喬は、好みて笛を吹く。あるひは鳳にともなひ、あるいは鶴に乗りて、二人ながら、仙を得て去りにけり。
すべて糸竹の妙なる声、後世にかなひ、仏事をなすといへり。「瑶琴治世音」といふことを、以言1)が作れる。
雲調黄徳軒丘遠
風奏南薫舞道興
唐の高宗の后、則天皇后2)の書き給へるにや、
皇禹聞泉台之声、遂登仙録
帝軒張洞庭之楽、早叶真源
かかれば、音楽をば、仙家人中にもこれをもてあそび、仏土天上にもこれを先とすと見えたり。これら管絃の徳をしるす。
翻刻
秦穆公ノ女哢玉ハ、タクヒナク簫ヲ愛シ周霊王太 子王喬ハ好テ笛ヲ吹、或ハ鳳ニトモナヒ、或ハ靏ニノリ テ、二リナカラ仙ヲ得テサリニケリ、スヘテ糸竹ノ妙ナ ル声、後世ニカナヒ仏事ヲナスト云リ、瑶琴治世音 ト云事ヲ以言カ作レル、 雲調黄徳軒丘遠、風奏南薫舞道興 唐高宗ノ后則天皇后ノ書給ヘルニヤ、 皇禹聞泉台之声遂登仙録 帝軒張洞庭之楽早叶真源 カカレハ音楽ヲハ仙家人中ニモ翫之、仏土天上ニモ是ヲ/k113
サキトストミエタリ、是ラ管絃ノ徳ヲシルス、/k114
text/jikkinsho/s_jikkinsho10-67.txt · 最終更新: 2016/04/17 18:23 by Satoshi Nakagawa