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十訓抄 第七 思慮を専らにすべき事

7の26 漢の高祖の臣張子房黄石公が兵書伝へて・・・

校訂本文

漢の高祖1)の臣、張子房2)、黄石公が兵書伝へて、支度をなして、項羽を討ち得たり。

高祖、ほめてのたまはく、「はかりごとを帷帳の中にめぐらして、勝事を千里の外に決すること、われ、子房にはしかじ」となり。「張良一巻書、立登師傅3)」とはこれを書けり。

すべて子房に限らず。田単、牛を放ちて、江逌4)、鶏つらねし、みないくさのたばかりなり。

秦の恵王5)、蜀の国を討たんとし給へるに、道絶えて、人かよふ境にあらず。はかりごとをめぐらし、石の牛を作りて、牛の尻に金を置きて、ひそかに境の辺(ほと)りに送りつかはす。

そののち、蜀の国の人、この牛を見て、「石牛、天より下りて、金を下せり」と思へり。すなはち五人の力人をして、山を掘り、牛を引くに、険(さが)しき山、平らげる道になりぬ。秦の相張儀をつかはして、石牛の跡を見て、蜀の国を討ち取りてけり。

翻刻

三十漢高祖臣張子房黄石公カ兵書伝ヘテ、支度
    ヲ成シテ、項羽ヲ打エタリ、高祖ホメテノ給ハク、ハ/k157
    カリコトヲ帷帳之中ニメクラシテ、勝事ヲ千里ノ
    外ニ決スルコト、我子房ニハシカシトナリ、張良カ一
    巻書ハ立登師傅トハ是ヲ書リ、スヘテ子房ニ限
    ラス田単牛ヲ放テ江廻鶏ツラネシ、皆イクサ
    ノタハカリナリ、秦ノ恵王蜀ノ国ヲ打ントシ給ヘル
    ニ、道絶テ人カヨフ境ニ非ス、ハカリコトヲ廻シ石ノ
    牛ヲ作テ牛ノ尻ニ金ヲ置テヒソカニ境ノ辺ニ送
    遣ス、其後蜀国ノ人此牛ヲ見テ、石牛天ヨリ下テ
    金ヲ下セリト思ヘリ、即五人ノ力人ヲシテ、山ヲ掘
    リ牛ヲ引クニ、サカシキ山平ケル道ニ成ヌ、秦相
    張儀ヲ遣シテ石牛ノ跡ヲ見テ、蜀ノ国ヲ打取テ/k158
    ケリ、/k159
1)
劉邦
2)
張良
3)
張良が一巻の書は、たちどころに師傅に登る
4)
底本「江廻」。蒙求等により訂正。
5)
恵文王
text/jikkinsho/s_jikkinsho07-26.txt · 最終更新: 2016/02/13 01:42 by Satoshi Nakagawa
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