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十訓抄 第六 忠直を存ずべき事

6の36 横川の恵心僧都の妹安養の尼上のもとに強盗入りて・・・

校訂本文

横川の恵心僧都1)の妹、安養の尼上のもとに、強盗入りて、あるほどの物の具、みな取りて出でければ、尼上は紙衾といふものばかり、ひき着て居られたりけるに、姉尼のもとに小尼上とてありけるが、走り参りて見れば、小袖を一つ落したりけるを、「これ落して侍るなり。奉れ」とて、持(も)て来たりければ、「それを取りて後は、わが物とこそ思ひつらめ。主の心ゆかぬ物をば、いかが着るべき。いまだ、よも遠くは行かじ、とくとく持ておはし取らせ給へ」とありければ、門戸の方へ走り出でて、「やや」と呼び返して、「これを落されにけり。たしかに奉らむ」と言ひければ、盗人ども、立ち止まりて、しばし案じたる気色にて、「悪しく参りにけり」とて、取りける物どもを、さながら返し置きて、帰りにけり。

翻刻

卅八横川恵心僧都ノ妹安養尼上ノモトニ強盗入テ、有
    程ノ物具皆取テ出ケレハ、尼上ハ紙衾ト云物斗ヒ
    キキテヰラレタリケルニ、姉尼ノモトニ小尼上トテ有ケ
    ルカ、走参テ見レハ、小袖ヲ一ツオトシタリケルヲ、コレ/k99
    オトシテ侍ナリ、タテマツレトテ、モテキタリケレハ、ソレ
    ヲトリテ後ハワカ物トコソ思ヒツラメ、主ノ心ユカヌ
    物ヲハイカカキルヘキ、未タヨモトヲクハユカシ、トクトクモテ
    オハシトラセ給ヘトアリ、ケレハ、門戸ノ方ヘ走リ出テ
    ヤヤトヨヒカヘシテ、是ヲオトサレニケリ、慥ニ奉ラム
    ト云ケレハ、盗人トモタチトマリテ、シハシ案シタル気
    色ニテ、アシク参ニケリトテ、トリケル物トモヲ、サナ
    カラ返シ置テカヘリニケリ、/k100
1)
源信
text/jikkinsho/s_jikkinsho06-36.txt · 最終更新: 2016/01/28 23:12 by Satoshi Nakagawa
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