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十訓抄 第一 人に恵を施すべき事

1の37 御堂入道殿若くおはしける時帥内大臣の御車に乗り具して・・・

校訂本文

御堂入道殿1)、若くおはしける時、帥内大臣2)の御車に乗り具して、一条摂政3)のもとへおはしけるに、牛の逸物(いちもつ)にて4)、辻のかいたをりなどを、おもしろくあがき回りければ、「この牛はいみじき逸物かな。いづくに候ひしぞ」と問はせ給ひければ、帥殿、「祇園に、人の誦経にしたりけるを、伝へ取りて侍るなり」と申し給ふに、「かかること、うけたまはらじ」とて、御指貫のそばを取りて、沓も履き給はで降りて、人の門の唐居敷(からゐしき)に立たせ給ひたりければ、帥殿はにがりておはしけり。

ゆゆしき御落度にや。

翻刻

御堂入道殿若クオハシケル時、帥内大臣ノ御車ニ乗具
シテ一条摂政ノ許ヘオハシケルニ牛ノ逸辻ノカイ/k71
タヲリナトヲ面白クアカキマハリケレハ此牛ハイミシ
キ逸物カナ、イツクニ候シソト問セ給ケレハ帥殿祇薗ニ
人ノ誦経ニシタリケルヲ伝取テ侍ルナリト申給
フニ、カカル事ウケ給ハラシトテ、御差貫ノソハヲ取テ
沓モハキ給ハテオリテ、人ノ門ノ唐居敷ニ立セ給
タリケレハ帥殿ハニカリテオハシケリ、ユユシキ御越
度ニヤ、/k72
1)
藤原道長
2)
藤原伊周
3)
藤原伊尹
4)
底本「物にて」は傍書。
text/jikkinsho/s_jikkinsho01-37.txt · 最終更新: 2015/09/21 18:26 by Satoshi Nakagawa
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