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十訓抄 第一 人に恵を施すべき事

1の1 仁徳天皇は三年の間みつき物をとどめて・・・

校訂本文

仁徳天皇は、三年(みとせ)の間、みつき物をとどめて、民の煙のにぎはへるを悦ばせ給ひ、一条院は、冬の夜、御衣を脱ぎて、「四海の民を思ひやるに、われひとり暖かなるべからず」とぞ仰せられける。これまた賢王・聖主のあまねき御恵みを、黎元黔首までに及ぼし給ふこと、古今変らざるゆゑなり。「君は民をして体とす」ともいひ、「王は兆民を子とす」ともいへり。いかがあはれみ給はざらん。

近くは、後京極摂政1)、かくぞ詠み給ひける。

  おほふへき袖こそなけれ世の中に寒けき民の冬のよなよな

中にも、太子十七ヶ条憲法には、「国に二人の君なし。民に二人の主なし。土民、御門を以て主とす。つかさどる所の官司は、御門の民臣なりとぞ。あへて公家と共に百姓を収めむ」と載せられたり。帝範には、「それ民は国の先、国は君の本」とあり。

かたがた、みだりがはしく、あなづり軽(かろ)むべからず。

翻刻

仁徳天皇ハ、ミトセノ間ミツキ物ヲトトメテ、民ノ烟
ノニキハヘルヲ悦セ給ヒ、一条院ハ冬夜御衣ヲヌキ
テ、四海ノ民ヲ思ヤルニ、我独暖ナルヘカラストソ仰ラ
レケル、是又賢王聖主ノアマネキ御メクミヲ、黎元
黔首マテニ及ホシ給フ事、古今カハラサル故也、君/k9
ハ民ヲシテ体トストモ云、王ハ兆民ヲ子トストモイヘリ、
イカカアハレミ給ハサラン、近ハ後京極摂政カクソヨミ
給ケル、
  オホフヘキ袖コソナケレ世中ニ、サムケキ民ノ冬ノヨナヨナ、
中ニモ太子十七ヶ条憲法ニハ、国ニフタリノ君ナシ、民
ニフタリノ主ナシ土民御門ヲ以テ為主ト、ツカサトル
所ノ官司ハ御門ノ民臣ナリトソ、敢テ公家ト共ニ百
姓ヲ収トノセラレタリ、帝範ニハ其民ハ国ノサキ、国
ハ君ノ本トアリ、旁猥クアナツリカロムヘカラス/k10
1)
藤原良経
text/jikkinsho/s_jikkinsho01-01.txt · 最終更新: 2015/08/17 19:18 by Satoshi Nakagawa
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