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text:ise:sag_ise075

伊勢物語

第75段 昔男伊勢の国に率て行きてあらんと言ひければ・・・

校訂本文

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昔、男、「伊勢の国に率(ゐ)て行(い)きてあらん」と言ひければ、女、

  大淀の浜に生ふてふみるからに心はなぎぬ語らはねども

と言ひて、ましてつれなかりければ、男、

  袖濡れて海人の刈り干すわたつうみのみるを逢ふにてやまんとやする

女、

  岩間より生ふるみるめしつれなくは潮干潮(しほひしほ)満ちかひもありなむ

また男、

  涙にぞ濡れつつしぼる世の人のつらき心は袖のしづくか

世に逢ふことかたき女になん。

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翻刻

むかしおとこいせのくににゐていきて
あらんといひけれは女
  おほよとの浜におふてふ見るからに
  こころはなきぬかたらはねとも
といひてましてつれなかりけれはおとこ
  袖ぬれてあまのかりほすわたつ海の/s84r
  みるをあふにてやまんとやする
女
  岩まよりおふるみるめしつれなくは
  しほひしほみちかひもありなむ
又おとこ
  なみたにそぬれつつしほる世の人の
  つらき心はそてのしつくか
世にあふ事かたき女になん/s84l

https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/200024817/84?ln=ja

text/ise/sag_ise075.txt · 最終更新: 2024/01/24 22:08 by Satoshi Nakagawa