text:chomonju:s_chomonju656
古今著聞集 草木第二十九
656 経信卿大宰帥に任じて下向の時八月十五夜に筑前国筵田駅に着きたりけるに・・・
校訂本文
経信卿1)、大宰帥に任じて下向の時、八月十五夜に筑前国筵田駅に着きたりけるに、天晴れ、月あきらかなるに、館の前に大きなる槻ありけり。枝葉広くさし覆ひて、月を隔てければ、人を召し集めて、たちまちにその木を切り払はせて、月に向ひて夜もすがら琵琶をかき鳴らして心を澄まして、天明けぬれば立たれけり。
かかる数寄人(すきびと)も今はなき世なりけり。
翻刻
経信卿大宰帥に任して下向の時八月十五夜に筑前 国席田駅につきたりけるに天晴月あきらかなる に館の前におほきなる槻ありけり枝葉ひろく/s518l
http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/518
さしおほひて月をへたてけれは人をめしあつめて たちまちにその木をきりはらはせて月にむかひ て夜もすから琵琶をかきならして心をすまし て天あけぬれはたたれけりかかるすき人もいま はなき世なりけり/s519r
1)
源経信
text/chomonju/s_chomonju656.txt · 最終更新: 2021/01/06 21:43 by Satoshi Nakagawa