text:chomonju:s_chomonju522
古今著聞集 興言利口第二十五
522 皇太后宮大夫俊成卿最勝光院の花見侍りけるついでに・・・
校訂本文
皇太后宮大夫俊成卿1)、最勝光院の花見侍りけるついでに、「御堂開けさせて拝まむ」とて、あづかりを尋ねけるが、遅く来たれば、「いかに」と重ねて言はするに、「鍵を求め失なひて」と答へけるを聞きて、何となく口ずさみに、
鍵預かるもじやうの大事にや
と言はれたりけるを、こともなき女房のありけるがうち聞きて、とりもあへず、
あけくれはさせることなきものゆゑに
と付けたりける。
たはぶれにても俊成卿の言ひ出だしたることに、肝太くぞ付けける。女はなほ恐しきものなり。
翻刻
皇太后宮大夫俊成卿最勝光院の花見侍けるつゐてに 御堂あけさせておかまむとてあつかりを尋けるかをそく きたれはいかにとかさねていはするにかきをもとめうしな ひてとこたへけるをききてなにとなく口すさみに かきあつかるもしやうの大事にやといはれたりけるを こともなき女房のありけるかうちききてとりもあへす あけくれはさせることなきものゆへにと付たりけるた はふれにても俊成卿のいひいたしたる事にきもふとくそ 付ける女はなをおそろしきものなり/s416l
1)
藤原俊成
text/chomonju/s_chomonju522.txt · 最終更新: 2020/09/26 12:28 by Satoshi Nakagawa