text:chomonju:s_chomonju463
古今著聞集 哀傷第二十一
463 冷泉内大臣文治四年二月二十日歳二十二にて失せ給ひてのち・・・
校訂本文
冷泉内大臣1)、文治四年二月二十日、歳二十二にて失せ給ひてのち、三七日の夜、後京極殿2)の二位中将にておはしましけるに、御夢に故大臣(おとど)六韻の詩をあらはし、和させ給ふべきよし申されけり。
御夢覚めて後、詩一句ばかりをぞ覚えさせ給ひける、
春月羽林悲自秋 春月、羽林自ら秋を悲しむ
とぞ侍りける。平生の御風情に変らざりければ、悲涙をのごひて、六韻詩を作らせ給ひける中に、
再会夢中談往時 再会して夢中に往時を談ず
遺文詞上識春愁 遺文詞上に春愁を識る
まことにさこそ思し召されけめ。あはれなることなり。
翻刻
冷泉内大臣文治四年二月廿日とし廿二にて失給て のち三七日の夜後京極殿の二位中将にておはしまし けるに御夢に故おとと六韻の詩をあらはし和させ 給へきよし申されけり御夢覚て後詩一句斗をそ おほえさせ給ける 春月羽林悲自秋とそ侍ける平生の御風情に かはらさりけれは悲涙をのこひて六韻詩を作らせ 給ける中に 再会夢中談往時遺文詞上識春愁 まことにさこそおぼしめされけめあはれなる事也/s363l
text/chomonju/s_chomonju463.txt · 最終更新: 2020/08/06 11:59 by Satoshi Nakagawa