text:chomonju:s_chomonju397
古今著聞集 画図第十六
397 後白河院の御時年中行事を絵に描かれて・・・
校訂本文
後白河院1)の御時、年中行事を絵に描かれて、御賞翫(ごしやうくわん)のあまり、松殿2)へ進ぜられたりけり。
細かに3)御覧じて、僻事(ひがごと)ある所々に押紙(おしがみ)をして、その誤りを御自筆にて注(しる)し付けて、返進せられたりけるを、法皇御覧じて、絵を描き直さるべきに、勅定に、「これほどの人の自筆にて押紙したる、いかがはなち捨てて絵を直すことあるべき。このことによりて、この絵すでに重宝となりたり」とて、さながら蓮華王院の宝蔵にこめられにけり。その押紙、今にあり。いといみじきことなり。
翻刻
後白川院御時年中行事を絵にかかれて御賞翫 のあまり松殿へ進せられたりけりこまにに御覧して 僻事ある所々に押紙をしてそのあやまりを御自/s300r
筆にてしるしつけて返進せられたりけるを法皇御 覧して絵をかきなをさるへきに勅定にこれ程 の人の自筆にて押紙したるいかかはなちすてて絵 をなをす事あるへき此事によりて此絵すてに重 宝となりたりとてさなから蓮華王院の宝蔵に 籠られにけりそのをし紙今にありいといみしき事 なり/s300l
text/chomonju/s_chomonju397.txt · 最終更新: 2020/05/19 22:30 by Satoshi Nakagawa