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text:chomonju:s_chomonju374

古今著聞集 相撲強力第十五

374 このことは後一条院の御時のことにや相撲の節に久光といふ相撲・・・

校訂本文

このことは、後一条院1)の御時のことにや。相撲の節に久光といふ相撲、爪を長くおほし敵を掻きけるに、常世に合はせられたりけるに、常世、一両度顔のほどを掻かれて後、久光が頭をつめて責めたりけるに、久光、悶絶しけり。あひ離れて、「今より後はかかることせじ」とぞ言ひける。その後、あへて近付かざりけり。

左大将、しきりに近付きて勝負をすべきよし、言はれけれども、なほ近付かざりけり。しからずは禁獄すべきよしを下知せられければ、久光いはく、「禁獄は命失すべからず。常世に近付きて命あるべからず」とぞ申しける。

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きかさる事也世の人推する事の侍けるとかや此事
は後一条院の御時の事にや相撲の節に久光
といふ相撲爪をなかくおほし敵をかきけるに常世に
合られたりけるに常世一両度顔のほとをかかれて
後久光か頭をつめてせめたりけるに久光悶絶しけり
あひはなれていまよりのちはかかる事せしとそいひ
ける其後あへてちかつかさりけり左大将しきりに
ちかつきて勝負をすへきよしいはれけれともなを近
つかさりけりしからすは禁獄すへきよしを下知/s273r
せられけれは久光いはく禁獄は命うすへから
す常世に近付て命あるへからすとそ申ける/s273l

http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/273

1)
後一条天皇
text/chomonju/s_chomonju374.txt · 最終更新: 2020/05/08 12:40 by Satoshi Nakagawa