text:chomonju:s_chomonju359
古今著聞集 馬芸第十四
359 後鳥羽院の御時の競馬に・・・
校訂本文
後鳥羽院1)の御時の競馬(くべうま)に、院の左の番長(ばんぢやう)秦頼次(兼平子)・府生下野敦近つかうまつりけるに、頼次が乗りたる馬、鞭を打ちたりけるに、馬場もとへ走り帰りたりけるに、敦近勝ちにけり。
「勝負普通ならず」と沙汰ありて、ほど経て敦近を召されたりけるに、保延の敦延がこと2)を思ひ出でて、禄を鞭の前にかけて、親しき者どもに向ひて、「獅子にや似たる」と言ひたりければ、御気色悪(あ)しくなりて、所帯も相違してけるとかや。
かやうの言葉は、人によりて言ふべきなり。
翻刻
後鳥羽院御時の競馬に院の左番長秦頼次(兼平子) 府生下野敦近つかうまつりけるに頼次か乗たる馬鞭 を打たりけるに馬場もとへはしり帰たりけるに 敦近勝にけり勝負普通ならすと沙汰ありてほとへて 敦近をめされたりけるに保延の敦延か事を思ひ 出て禄を鞭の前にかけてしたしき物ともにむかひ/s262r
て師子にや似たるといひたりけれは御気色あしく成て 所帯も相違してけるとかやかやうのこと葉は人によ りていふへきなり/s262l
text/chomonju/s_chomonju359.txt · 最終更新: 2020/05/03 12:28 by Satoshi Nakagawa