text:chomonju:s_chomonju145
古今著聞集 和歌第六
145 花山院御ぐしおろさせ給ひて後・・・
校訂本文
花山院1)、御ぐしおろさせ給ひて後、叡山より下らせ2)給ひけるに、東坂本の辺に、紅梅のいとおもしろう咲きたりけるを、立ちとどまらせ給ひて、しばし御覧ぜられけり。惟成弁入道3)、御供に候ひけるが4)、「王位を捨てて御出家あるほどならば、これ体(てい)のたはぶれたる御振舞ひは、あるまじき御事に候ふ」と申し侍りければ、詠ませ給うける、
色香をば思ひもいれず梅の花常ならぬ世によそへてぞ見る
翻刻
花山院御くしおろさせ給て後叡山よりくたせ給けるに 東坂本の辺に紅梅のいとおもしろうさきたりけるを立 ととまらせ給てしはし御らんせられけり惟成弁入道御/s112r
ともにかけ給か王位をすてて御出家ある程ならは これ体のたはふれたる御振舞はあるましき御事に 候と申侍けれはよませ給うける 色香をは思もいれす梅花つねならぬ世によそへてそみる/s112l
text/chomonju/s_chomonju145.txt · 最終更新: 2020/02/21 13:55 by Satoshi Nakagawa