text:chomonju:s_chomonju133
古今著聞集 文学第五
133 ある人連句のたびごとに想像花陽洞と定まれることに言ひけり・・・
校訂本文
ある人、連句のたびごとに、「想像花陽洞(想像花陽の洞)」と定まれることに言ひけり。ある日、人々寄り合ひたりけるに、かの人、案のごとく、またこの句を言ひたりけるを、素俊法師1)、とりもあへず、「左存松子亭2)」と言ひたりけり。満座、興に入りて腸を切りけるとぞ。
この素俊は連句の上手なりけり。
春調春鶯囀 春に調ぶ春鶯囀
古聞古鳥蘇 古に聞く古鳥蘇
琵琶称牧馬 琵琶は牧馬を称す
羯鼓3)習泉狼 羯鼓は泉狼を習ふ
これらも素俊が秀句とぞ申し侍る。
翻刻
或人連句のたひことに想像花陽洞とさたまれる ことにいひけり或日人々よりあひたりけるにかの人 案のことく又此句をいひたりけるを素俊法師とりも あへす左(サ)存(ソンシタリ)松子亭といひたりけり満座興に入 て腸をきりけるとそこの素俊は連句上手なりけり 春調春鶯囀 古聞古鳥蘇 琵琶称牧馬 鞁皷習泉狼これらも素俊か秀句とそ申侍る/s101l
text/chomonju/s_chomonju133.txt · 最終更新: 2020/02/18 14:02 by Satoshi Nakagawa