text:chomonju:s_chomonju108
古今著聞集 文学第五
108 天暦六年十月十八日後江相公の夢に白楽天来たり給へりけり・・・
校訂本文
天暦六年十月十八日、後江相公1)の夢に、白楽天2)来たり給へりけり。相公、悦びて会ひ奉りて、その形を見れば、白衣を着給ひたり。面の色、赤黒(あかぐろ)にぞおはしける。青きもの着たる者四人、あひしたがひたりけり。相公、「都率天3)より来たり給へるか」と問ひ奉られければ、「しかなり」とぞ答へ給ひたりける。
申すべきことありて来たれるよし、のたまひけるに、いまだ物語に及ばずして、夢覚めにければ、口惜しきことかぎりなかりけり。
翻刻
天暦六年十月十八日後江相公の夢に白楽天き たり給へりけり相公悦てあひたてまつりてそのかた ちをみれは白衣をきたまひたり面の色あかくろにそ をはしけるあをき物きたるもの四人あひしたかひたりけり 相公都率天よりきたり給へるかと問たてまつられ けれはしかなりとそこたへ給たりける申へきことありてきた れるよしのたまひけるにいまたものかたりにをよはすして/s89r
夢さめにけれは口をしき事かきりなかりけり/s89l
text/chomonju/s_chomonju108.txt · 最終更新: 2020/02/04 12:10 by Satoshi Nakagawa