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古今著聞集 公事第四
91 万寿二年踏歌の節会に右大臣内弁にて陣に付きて宣命見参を見給ひける間・・・
校訂本文
万寿二年、踏歌(たふか)の節会に、右大臣1)、内弁にて陣に付きて宣命・見参を見給ひける間、入御2)ありけるに、三位中将師房卿3)をおきながら、大納言斉信卿4)、警蹕(けいひつ)をせられければ、人々怪しみあへりけり。
権大納言行成卿5)、その失錯(しつさく)を扇に記して、臥内(ぐわない)にうち置かれたりけり。暦に記さんために、まづ扇には書きたりけるにや。
その子息の少将行経6)、その扇を取りて、内裏へ参りたりけるを、隆国朝臣7)、参り合ひて、わが扇に取り替へて見られければ、この失礼を記したりける。それよりやがて披露ありけるを、斉信卿、深く恨みけり。
「もとよりよろしからざる仲なりければ、かかる」とぞ、世の人言ひける。
翻刻
万寿二年踏哥節会に右大臣内弁にて陣に付て宣 命見参を見給ける間入御ありけるに三位中将師房卿 ををきなから大納言斉信卿警蹕をせられけれは人々 あやしみあへりけり権大納言行成卿その失錯を扇 にしるして臥内にうちをかれたりけり暦にしるさん為に 先扇には書たりけるにや其子息少将行経その扇を取て 内裏へまいりたりけるを隆国朝臣まいりあひて我 扇にとりかへて見られけれは此失礼を記したりける其より やかて披露ありけるを斉信卿ふかくうらみけりもとより/s80l
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よろしからさる中なりけれはかかるとそ世の人いひける/s81r
text/chomonju/s_chomonju091.txt · 最終更新: 2020/01/30 22:28 by Satoshi Nakagawa