text:chomonju:s_chomonju078
古今著聞集 政道忠臣第三
78 後朱雀院の御時旬に参りたりける上達部を御覧じて・・・
校訂本文
後朱雀院1)の御時、旬(しゆん)に参りたりける上達部を御覧じて、次の日、資房卿2)の蔵人頭なりけるを召して、「昨日、公卿の装束を御覧ぜしかば、もつてのほかに袖大きになりにたり。かくては世の費えなるべし。『いかがせんずる』と右大臣(実資)3)のもとへ言ひ合はすべし」と勅(みことのり)ありければ、すなはち申されければ、大臣(おとど)申給ひけるは、「みなの公卿に、このよしを承りて、かしこまり申さば、さすがに、『老大臣御気色かぶりたる』と聞こえば、人も直り侍りなむ」とはからひ申されければ、その定(ぢやう)に披露ありて、右府閉門してかしこまるよしをせられければ、人みな聞き恐れて、装束の寸法すべられけり。
翻刻
後朱雀院の御時旬にまいりたりける上達部を 御覧して次日資房卿の蔵人頭なりけるをめして 昨日公卿の装束を御覧せしかは以外に袖大になり にたりかくては世のついへなるへしいかかせんすると/s74l
http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/74
右大臣(実資)のもとへいひあはすへしとみことのりありけれは すなはち申されけれはおとと申給けるはみなの公卿に このよしをうけたまはりてかしこまり申さはさすかに老 大臣御気色かふりたるときこえは人もなをり侍な むとはからひ申されけれはその定に披露ありて右 府閉門して畏よしをせられけれは人みなききお それて装束の寸法すへられけり/s75r
text/chomonju/s_chomonju078.txt · 最終更新: 2020/01/28 12:23 by Satoshi Nakagawa