ユーザ用ツール

サイト用ツール


text:chomonju:s_chomonju003

古今著聞集 神祇第一

3 延長八年六月廿九日夜貞崇法師勅を承りて・・・

校訂本文

延長八年六月廿九日夜、貞崇(ぢやうそう)法師、勅を承りて、清涼殿に候ひて、念仏し侍りけるに、夜、やうやう深(ふ)けて、東の庇に、大なる人の歩む音聞こえけり。貞崇、簾をかき上げて見ければ、歩み帰る音して人見えず。

その後、また小人の歩み来る声す。やうやう近くなりて、女声にて、「何によりて候ふぞ」と問ひければ、貞崇、勅を承はりて候ふよしを答ふ。小人の言ひけるは、「先のたび、汝、大般若1)の御読経つかうまつりしに、験ありき。始め歩み来たりつる物は邪気なり。かの経によりて、足焼損じて調伏せられぬ。後のたびの金剛般若の御読経奉仕の時は、験なかりき。このよしを奏聞して、大般若の御読をつとめよ。我はこれ稲荷神なり」とて、失せ給ひぬ。貞崇、このよしを奏聞し侍りけり。

翻刻

延長八年六月廿九日夜貞崇(チヤウソウ)法師勅をうけ給り
て清涼殿に候て念仏し侍けるに夜やうやう深て
東のひさしに大なる人のあゆむ音きこへけり/s10l

http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/10

貞崇簾をかきあけてみけれはあゆみ帰音して人みえ
すそののち又小人のあゆみくる声すやうやう近く
成て女声にて何によりて候そと問けれは貞崇
勅をうけたまはりて候よしをこたふ小人のいひける
は先度汝大般若の御読経つかうまつりしに験あ
りきはしめあゆみ来りつる物は邪気也彼経に
よりて足焼損して調伏せられぬ後のたひの金剛
般若の御読経奉仕の時は験なかりき此由を奏聞
して大般若の御読をつとめよ我はこれ稲荷
神なりとてうせ給ぬ貞崇この由を奏聞し侍
けり三井寺の鎮守新羅明神は沙竭羅竜王の子也/s11r

http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100190287/viewer/11

1)
大般若経


text/chomonju/s_chomonju003.txt · 最終更新: 2020/01/12 23:28 by Satoshi Nakagawa