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大和物語
第4段 野大弐純友が騒ぎの時討の使に指されて・・・
校訂本文
野大弐1)、純友2)が騒ぎの時、討(うて)の使に指されて、少将にて下りける、おほやけにもつかうまつり、四位にもなるべき年に当りければ、正月(むつき)の加階賜はりのこと、いとゆかしう思え3)けれど、京より下る人もをさをさ4)聞こえず。
ある人に問へば、「四位になりたる」とも言ふ。ある人は、「さもあらず」とも言ふ。「さだかなること、いかでか聞かむ」と思ふほどに、京のたよりあるに、近江の守公忠5)の君の文(ふみ)をなん持て来たる。
いとゆかしう、うれしう、開けて見れば、よろづのことども書きもていきて、月日書きて、奥に、かくなん、
たまくしげふたとせあはぬ君が身をあけなからやはあはんと思ひし
これを見て、かぎりなく悲しくてなむ泣きける。
四位にならぬよし、文(ふみ)の言(こと)なくて、ただ、かくなんありける。
翻刻
ててのちまてなむかたりける野大弐すみ ともかさわきのときうてのつかひにささ れて少将にてくたりけるおほやけにも つかうまつり四位にもなるへきとしに あたりけれはむ月のかかいたまはりの こといとゆかし□□ほえけれと京より くたるひともを□□きこえすある人に/d7r
とへは四位になりたるともいふあるひとは さもあらすともいふさたかなることいかて かきかむとおもふほとに京のたよりあ るにあふみのかみきむたたのきみのふみ をなんもてきたるいとゆかしううれし うあけてみれはよろつのことともかき もていきて月日かきておくにかくなん たまくしけふたとせあはぬきみか 身をあけなからやはあはんとおもひし これをみてかきりなくかなしくてなむ なきける四位にならぬよしふみのこと/d7l
なくてたたかくなんありける/d8r
text/yamato/u_yamato004.txt · 最終更新: 2017/05/12 02:23 by Satoshi Nakagawa