text:towazu:towazu3-30
とはずがたり
巻3 30 今はこの世には残る思ひもあるべきにあらねば・・・
校訂本文
今はこの世には残る思ひもあるべきにあらねば、「三界の家を出でて、解脱の門(かど)に入れ給へ」と申すに、今年は有明1)の三年(みとせ)に当たり給へば、東山の聖のもとにて七日法華講讃を五種の行に行なはせ奉るに、昼は聴聞に参り、夜は祇園2)へ参りなどして、結願には、露消え給ひし日なれば、ことさらうち添ゆる鐘も、涙もよほす心地して、
折々の鐘の響きに音を添へて何と憂き世になほ残るらん
翻刻
七日のさんろうはてぬれはやかてきをんにまいりぬいまはこの 世にはのこるおもひもあるへきにあらねは三かいのいゑをいてて けたつのかとに入給へと申にことしはあり明の三とせにあ たりたまへは東山のひしりのもとにて七日法花かう/s147r k3-68
さんを五しゆのきやうにをこなはせたてまつるにひるはち やうもんにまいり夜はきをんへまいりなとしてけちくわん には露きえたまひし日なれはことさらうちそゆるかねもなみた もよほす心ちして おりおりのかねのひひきに音をそへて何とうき世に猶のこるらん/s147l k3-69
text/towazu/towazu3-30.txt · 最終更新: 2019/09/03 17:10 by Satoshi Nakagawa