text:towazu:towazu2-18
とはずがたり
巻2 18 春はいつしか御参りあることなれば・・・
校訂本文
春はいつしか御参り1)あることなれば、入らせ給ひたるに、九献(くこん)参る。ことさら外様(とざま)なる人もなく、しめやかなる御ことどもにて、例の常の御所にての御ことどもなれば、逃げ隠れ参らすべきやうもなくて、御前に候ひし。御所、「御酌に参れ」と仰せありしに、「参る」とて、立ちざまに鼻血垂りて、目も暗くなりなどせしほどに、御前を立ちぬ。
その後十日ばかり、如法大事に病みて侍りしも、「いかなりけることぞ」と恐しくぞ侍りし。
翻刻
むなしくとしも帰ぬ春はいつしか御まいり有ことなれは いらせ給たるに九こんまいることさらとさまなる人もなく しめやかなる御事ともにてれいのつねの御所にての御事 ともなれはにけかくれまいらすへきやうもなくて御まへに 候し御所御しやくにまいれとおほせ有しにまいるとて たちさまにはなちたりてめもくらくなりなとせし ほとに御まへをたちぬそののち十日はかり如法/s85l k2-41
http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/100218515/viewer/85
大事にやみて侍しもいかなりける事そとおそろし くそ侍しかくてきさらきの比にや新院いらせおはし/s86r k2-42
1)
有明の月の参上
text/towazu/towazu2-18.txt · 最終更新: 2019/06/11 12:27 by Satoshi Nakagawa