text:towazu:towazu1-18
とはずがたり
巻1 18 八月二日いつしか善勝寺大納言御帯とて持ちて来たり・・・
校訂本文
八月二日、いつしか善勝寺大納言1)、「御帯」とて、持ちて来たり。「『諒闇ならぬ姿にてあれ』と、仰せ下されたる」とて、直衣にて前駆(せむくう)・侍、ことごとしく引きつくろひたるも、「『見る折り』と思し召し急ぎけるにや」と思ゆ。
病人(やまひびと)2)もいと喜びて、勧杯(けんぱい)など言ひ営まるるぞ、「これやかぎり」と、あはれに思え侍りし。
御室より賜りて秘蔵(ひさう)せられたりし塩竈(しほがま)といふ牛をぞ引かれたりし。
翻刻
もあはれにかなし八月二日いつしか善勝寺大納言御をひ とてもちてきたりりやうあんならぬすかたにてあれと おほせ下されたるとてなをしにてせむくうさふらひことこと しくひきつくろひたるもみるをりとおほしめしいそき けるにやとおほゆやまひ人もいとよろこひてけんはいなと いひいとなまるるそこれやかきりとあはれにおほえ侍し 御室より給てひさうせられたりししほかまといふうし をそひかれたりし今日なとは心ちもすこしをこたるや/s24l k1-39
text/towazu/towazu1-18.txt · 最終更新: 2019/03/19 18:52 by Satoshi Nakagawa