text:shaseki:ko_shaseki08a-02
沙石集
巻8第2話(95) 鶏の子を殺し酬ふ事
校訂本文
尾州に、若き女房、子に食はせんとて、鶏のかひ子をあまた殺してけり。
ある時、夢に女人一人来たりて、わが子の臥したる枕もとにうち居て、「子はいとほしきぞかしな、子はいとほしきぞかしな」と言ひて、よに恨めしげなる気色にて、うち泣きうち泣きすると見て、この子悩みて、ほどなく失せぬ。
弟(おとと)のありけるが、また悩みける時も、先の女人、少しもたがはず、先のやうに言ふと見て、その子も失せにけり。
当時ある人なり。
翻刻
雞子殺酬事 尾州ニ若女房子ニクハセントテ雞ノカイ子ヲアマタ殺シテケリ/k8-291l
或時夢ニ女人一人来テ我子ノ臥タル枕モトニウチヰテ子ハ イトオシキソカシナ子ハイトオシキソカシナトイヒテヨニ恨メシケナル気色ニテウチナ キウチナキスルト見テコノ子ナヤミテ程ナクウセヌオトトノ有ケルカ又 ナヤミケルトキモサキノ女人少シモタカハスサキノ様ニ云ト見テ ソノ子モ失ニケリ当時有人也/k8-292r
text/shaseki/ko_shaseki08a-02.txt · 最終更新: 2019/02/16 21:39 by Satoshi Nakagawa