text:sesuisho:n_sesuisho8-157
醒睡笑 巻8 祝ひすました
4 同じ信長公へ諸大名おのおの元日の出仕ありつる座敷にて・・・
校訂本文
同じ信長公1)へ、諸大名、おのおの元日の出仕ありつる2)座敷にて、仰せあるやう、「今宵の夢に、いづくともなく出陣の心地して、一縮(いつしゆく)よろひて馬に乗ると思ひつれば、乗りたる馬の足、四つながら折れて、危ふかりし3)体(てい)を見たは」と、御諚(ごぢやう)あるに、誰(たれ)もうむの返答なし。
また、藤吉郎殿4)とりあんず、「千秋万歳の御夢なるべし5)。そのゆゑは、合戦をなさるるたび、いつも勝武者(かちむしや)6)の御名、一天にとらせ給ふべき御告(おつげ)とこそ存じ候へ」とのたまひしが、まことに戦のあるとなれば、勝ち給はぬなかりき7)。
翻刻
一 同信長公へ諸大名をのをの元日の出仕ありは つつ座敷にて仰あるやうこよひの夢にいつく 共なく出陣のここちして一しゆくよろひて馬 にのるとおもひつれはのりたる馬の足四つな からおれてあやりかりしていを見たはと御諚 あるにたれもうむの返答なし又藤吉ら殿/n8-61l
とりあんす千秋万歳の御夢ゐるべく そのゆへは合戦をなさるるたびいつもかちむ しやの御な一天にとらせたまふへき御つげとこそ 存候へとのたまひしがまことに戦のあると なれはかちたまはぬなかり/n8-62r
text/sesuisho/n_sesuisho8-157.txt · 最終更新: 2023/04/15 00:39 by Satoshi Nakagawa