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text:sesuisho:n_sesuisho8-153

醒睡笑 巻8 茶の湯

19 慈照院殿愛に思し召さるる壺あり名を何とか名付けんと御工夫ある・・・

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慈照院殿1)、愛に思し召さるる壺あり。「名を何とか名付けん」と御工夫ある。

ころは寛正二年八月二十日、「誰(たれ)かある。今日は二十日か」とお尋あれば、女房たちの聞きもあへず、「なかなか、今日初雁を聞き参らせた」と申し上げられたり。「あら、おもしろの返事や」とて、能阿弥2)に向かはせ給ひ、

  誰も聞け名付くる壺の口開き今日初雁の声によそんで

と仰せあれば、能阿弥とりもあへず

  初雁の聞こえ上げける言の葉よいやめづらしき雲の上まで

この由来により、初雁といふ壺ありとなん。

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一 慈照院殿愛に思召るる壺あり名を何と
  かなつけんと御工夫ある比は寛正二年八月廿日/n8-59r
  たれかある今日は廿日かとお尋あれは女房達
  のききもあへす中々けふ初雁をききまいら
  せたと申上られたりあらおもしろの返事
  やとて能阿弥にむかはせ給ひ
   たれもきけ名つくる壺のくちひらき
    けふはつかりの声によそんて
  とおほせあれは能阿弥とりもあへす
   初雁の聞えあけける言のはよ
    いやめつらしき雲の上まて/n8-59l
  此由来により初雁といふ壺ありとなん/n8-60r
1)
足利義政
2)
中尾真能
text/sesuisho/n_sesuisho8-153.txt · 最終更新: 2023/03/09 21:45 by Satoshi Nakagawa