text:sesuisho:n_sesuisho8-068
醒睡笑 巻8 頓作
68 広橋大納言殿へ春可参りてありしが壁の根に菊一もと咲きてあり・・・
校訂本文
広橋大納言殿1)へ、春可参りてありしが2)、壁の根に、菊一もと咲きてあり。「見事や」など讃め参らする時、「あれは壁の外、菊畠なるゆゑ、伝ひて咲きたるなり。今一句」と仰せあれば、
壁に耳隠すやことをや菊の花
と申すにぞ、広橋殿、
たそがれ時の秋の盗人(ぬすびと)
卯月十日、春可、宇治に侍りしが、「今日より茶を摘みそむる」と言ふを聞きて、
手始めはいろはを3)えらむ宇治茶かな
翻刻
一 広橋大納言殿へ春可参りてありし壁の 根に菊一もと咲てあり見事やなとほめ/n8-28l
まいらする時あれは壁の外菊畠なるゆへ伝ひ て咲たるなり今一句と仰あれは 壁に耳かくすや事をや菊の花 と申にそ広橋殿 たそかれ時の秋の盗人 卯月十日春可宇治に侍りしがけふより 茶をつみそむるといふを聞て 手始はいろはをゑらむ宇治茶かな/n8-29r
text/sesuisho/n_sesuisho8-068.txt · 最終更新: 2022/11/12 21:38 by Satoshi Nakagawa